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<<<2008年5月までに思い出したこと。

   




『大人になった故林広志』
  土田英生

間もなく東京公演だというのに、
この『ガバメント・オブ・ドックスについて思い出してみた。』が更新されていないことに
勝手に責任を感 じて書き出した。
『いつの間にやらリレーエッセイ?』という副題もすでに辻つまが合わなくなっている。

だから……実は何も思い出していないのに書いている。
書きながら何かを思い出さなければ。
しかも無理やりリレーエッセイにする為にも故林広志について記さなければならない。

……故林広志はコント作家としてはとても優秀だったが、社会常識にはとても疎い人間だった。

稽古の帰りに私の部屋にやって来て『ちょっとネタを直そう。よしここで書こう』
と妙な言葉を呟きながらでかいワープロをカバンから取り出し、
いきなり目の前にあったコンセントを抜いて自分のワープロのコードを差したりしていた。
お陰で私のビデオの時計は00:00に戻ってしまうし予約録画も駄目になった。

更に私が気持ちよく眠っている夜中に電話をかけて来て
『あのネタだけど……』といきなり話し出す。
私が『夜分恐れ入ります』というフレーズを彼に教えてあげたのもその頃だ。
しかし慣れていない彼には難しかったようだった。
それ以降の電話で彼は
『えっと、えっと、夜分恐れいる、などと言うのだな……ええ、あの、あの、あのネタだけど……』と、
かなり緊張していたものだ。

しかし今の故林君は大人になった。

5月の大阪公演の打ち上げで彼は『皆の協力のお陰で公演を終えることが出来ました』などという、
長い挨拶をスラスラと喋っていた。
『夜分恐れ入ります』が言えなかったのに、と思うと私は目頭が熱くなった。

そんな大人になった故林君が、ここだけは変わらない“冴えた筆づかい”で書いたコントの数々。
皆さんに観に来てもらいたい。

2008.10.9up



『東京の記憶2』
  故林広志

93年頃。

私とエディはライブ出演のため金曜夜に上京、日曜夜に翌日の仕事のため京都に帰る
…夜行列車に間に合うよう二人は夜の東京を急いだものだ。
二人ともまだ東京に不案内、東京駅に向かったつもりが迷ってしまう。
仕方なく拾ったタクシーが、自分たちが必死に走ってきた道を
順々に逆走しながら駅に向かって行ったときにはさすがに脱力した。

夜行と言えば今は無き寝台特急「銀河」。
ちなみにエディは「電車の座席で寝る姿勢」がなかなか決められない。

阪急電車などに乗って座るとする。
目は閉じたものの、青い息を漏らしながら体の向きをしきりに変えるのがエディ流。
気づけば起きて座っている人よりも精力的に動いてしまっており、
高槻あたりでどう見ても苦しげなヨーガのような体勢になったりしている。

そんなエディが寝台特急で安眠できるはずがない。
京都に着くまでの7時間、カーテンの仕切りで夜中の寝苦しいであろう彼の様子は見えない。
見えこそしないが、早朝京都駅到着と共にカーテンを開け、
呻くように「おはよう」と言ったエディの両目は切れ長に引きつり、
まるで「偽ウルトラマン」のようになっていたものだ。

かく言う私も月曜の仕事には身が入らず、
「ゆうべ自分たちが居た東京の地名とおんなじ」標識をぼんやり見ていたものだ。
当時私の職場は京都市東山区の渋谷(しぶたに)。って所にあったのですね。

2008.8.28up



『東京の記憶』
  故林広志

ちょっと久々なので改まった感じで思い出してみよう。

そういえば何かと二つのことを対立させて考えたものだ。
「演劇とお笑い」。「プロとアマ」。垣根の有無。「東京と京都」もその一つ。
仕事を広げるために11年前に京都から東京に移ったわけだが、
その前から東京でコントを何度かやっていた。
中でも浅草木馬亭のコントカーニバルは
現代っ子の私たち若手にとって大変勉強になる場だった。

出演者たち(BOOMER、ブランドル、ビシバシステム)に混じって開演を待つ大部屋、
相方であるエディは落語を演じることにより敵と戦う和服ヒーロー
「ショウフクターZ」の衣装で役作りをしていた。
緊張の中にも皆さん和気あいあい、しかし一変緊張が走った。
ベテラン芸人さんがいらっしゃったのだ。
ベテラン芸人さんが酒灼けした顔に深い皺を刻みながらどかっと座ったのだ!
そして最近の若手の礼儀の無さにダメ出し。

「楽屋での座る順番すら守れていない、昔はコントの連中は上座になんて座れなかった、
上座は・・(表情が柔和に)うん、ああいうふうに落語家さんが座るものだった」

なんだ、座り位置のしきたりは意外と守られているじゃないかーと感心する
ベテラン芸人さんの目線の先には・・そう、
お察し通り「扮装だけ落語家」のエディが、空気を瞬時に読み何食わぬ顔で正座していた。
志ん朝の首の角度を幾分マネた後は、細かい所を突っ込まれないよう
目を閉じぶつぶつと噺を繰るような様子さえ見せて。

「ベテランと若手」という対立が氷解した瞬間だった。

2008.8.22up



『時計をなくしたことを思い出してしまった』
  水沼 健

またまた撮影の話で恐縮なのだけど、撮影中に腕時計をなくしてしまった。
もう6年ほど使っていたやつなので、充分役に立ってくれたとは思うが、それにしても残念だ。

撮影技師の遠藤君と田中君が撮影後に付き合ってくれて
すっかり暗くなった田舎道に時計を探してみたのだけれども
その甲斐なく、あきらめることにした。

そのあと遠藤君と天天有というわりと有名なラーメン屋さんに行った。
ラーメン屋で普通頼むようなメニューをあらかた頼んだ後、遠藤君がタバコを買いに行った。
タバコ屋はすぐ歩いて30秒くらいのところにあった。

遠藤君が買いに行った後、ビールが来た。
しばらくしてラーメンが来て、しかるのちに餃子が来た。
しかし遠藤君が来なかった。
どうしたものかなと思いつつ、ビールはとりあえず飲み出してみた。

店の外は行列が出来ている。
なるべくはやく食べて次の人に席を譲りたいものだが、なかなか帰ってこなかった。
とりあえずビールをお変わりしたころに遠藤君がやっと帰ってきた。

どうにも歩いて30秒のタバコ屋はしまっていて
自販機はあったが、タスポがないから買えなかったらしい。
これだ。タスポだ。T・A・S・P・Oだ。
私の周りにこいつを持っている人間を見たことがない。
もちろん私も持ってない。持つ気はないが、持たざるを得ないのか…。

伸びたラーメンを食べながら自問したのだった。

2008.7.24up



『映像コントの撮影で月日が流れたことを感じた』
  土田英生

先日、京都組(エディ/水沼/土田)で東京公演用の映像コントを撮影した。
昔はライブの中に必ずといっていい程、映像コントがあった。
特に月刊ライブの頃(93年?)はいつも使っていた気がする。

当時の私達は20代で時間が有り余っていた。
まだ大学の周りをウロウロしていたので撮影する場所にも困らなかったし、
更には体力もあったし、その上、ラフに創っていたのでキツかったという記憶がない。

で、久しぶりに撮った訳だが、今の私達は40代。
まず時間がない。
体力もない。更には撮影する場所にも困る。前よりきっちり撮るので時間がかかる。
おまけに撮影日は炎天下。
映画の撮影などならばロケバスなどがあって休めるが私達にはそんな場所もない。
木陰に身を寄せて水ばかり飲んでいた。

目眩がした。走るシーンでは気分が悪くなった。
朝の10時から夜9時前まで一日での強行軍。

もし、次のライブが11年後だったら……もう映像コントには出演出来ないのではないかと不安になる。
もしくは涼しい場所でロケバスとケータリングを用意し……いや、それは私達には似合わない。
だからせめて室内のシーンだけにして欲しいと思う。
    

2008.7.22up



『久しぶりの映像コントの撮影で厄年を思い出した』   エディ・B・アッチャマン

その日は、全国で453人の人が熱中症の症状を訴えて病院を訪れたという。
そんな暑い中、我々ガバメントオブドッグスはコント映像の撮影で京都市内を車で飛び回りました。

移動の車中で、土田君とは「お互い厄年なのに比較的いいことばかり続くので少し怖い」
「俺もだよエディ」などと会話しました。

故林の描いた絵コンテに沿って炎天下で撮影は続きましたが、その内容は過酷で、
故林がこれをクーラーの良くきいた部屋で麦茶なんぞを脇において描いたのかと思うと
正直少しイラッとしましたが、そういえば厄年なのに久々にガバメントもできて本当に楽しいな!などと
テンションを自主的にあげて撮影をこなしていきました。

でも途中で雲行きが変わりました。

駐車違反の切符をきられたのです。
私は先週、一旦停止違反で捕まったばかりなのだ。
しかしその頃には頭がボーっとしてきており、
青信号で止まって、赤信号で急発車するまでに私は壊れ始めていました。
ですからその事態に際してもなんだか笑えてきました。。

段差で乗り上げた際の衝撃で車のどこかが変形したのかスピードを上げるたびに
前輪からウワンッ ウワンッ ウワンッと大型犬が鳴いているような異様な音が断続的に響きます。

厄年なのですからこれくらいは仕方ないのかもしれません。

そんな苦難を乗り越え撮影は夜遅くに終わりました。
帰り道にごはんとあさりの味噌汁、そして季節はずれのぶりの照り焼を土田君にご馳走になりました。

映像。出来ばえがきになりますが、編集者は厄年とは無縁なのできっとうまくいくでしょう。

2008.7.20up

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